美術という言葉、アートという言葉の、それぞれの違いから考察します。
美術は、訳語です。明治初期に作られました。(哲学も同様です。)
更に直訳すると、美の(美を作る)術(すべ=技術)。
訳語の意味するところは、美しいものを作る、技術的に上手いものを作る、というイメージに肯定的です。
これに対して、
●アートは、美しくなくても構わない(美しくても構わない)。
●上手くなくても構わない→技術より、どうしてそのように表現したか?が大切。
アートには、醜くても不快でも肯定される、幅の広さがあります。
美術はそれに比べると、少し意味が狭く感じられます。
美術の授業では、上手い下手が成績の基準になっていることもあり、私は多くの方から「美術は苦手。」「絵心が無い。」と聞かされましたが、子供がいきなり自転車に乗れないのと同様、初心者がいきなり上手く描けるようなことは、珍しいことです。技の習得には、デッサンという方法で、時間を掛けて取り組みます。これも、専門家を目指す人が行う特別なものではなく、誰でも練習すればするほど上手くなるものです。
絵心は、服を合わせたり、化粧をするような、日常的なことにも表れるものだと思います。誰でも、線を描いたり色を塗ったりすることが出来ますから、それを楽しんで構わないわけです。アートセラピーという欧米の医療資格があるのですが、そこでは患者が線を描いたり色を塗ったりすることを、精神医療に役立てています。それほど汎用性があるアートなのですが、美術では下手=カッコ悪い=楽しくない一般見解(誤解)が、世界を狭くしているようです。上手い下手関係なく、人目を気にせず、アートは楽しむ人が増えていけばいいですね!