Q.
現代アートは、その解釈・謎解きが重要と聞いています。作品ごとに、一つでなくさまざまな解釈ができるという話もわかります。各自が自分の解釈を見つけなさいという話もわかります。
それが分かっている上で、なのですが、有名な色々な作品について、今までにどんな解釈がされてきたのか、その解釈例を知りたいのですが、どのようにすれば(書籍? 講座?)良いのでしょうか?

A.
実は、有名な作品が、今までにどんな解釈がされてきたのか?考えても見ませんでした。
美術史では、第二次大戦中、「退廃芸術」と呼ばれていたものが、戦後「第一線の、素晴らしいアート」と解釈が急展開したぐらいは知っていますが、、、。
それは私が、アートを鑑賞して感動したいという、素朴な動機しかもっていなかったためで、感動→解釈は人それぞれだろうから、そこに重きを置かなくても良いと、タカを括っていたからです。
また、興味のあるアーティストの、制作意図が知りたくなって、評論を読んだりしたこともあります。でも、色々な解釈が知りたくて、色々な評論家の論説を読み比べたりしたことはありません。

解釈の前の、鑑賞については、とても大切なことだと思っています。
先入観を持たず、まず作品と対峙して見る。
出来るなら、本物と一対一になる。(だから、大勢が詰めかける展覧会は避ける。)
第一印象を大切して、作品から受けたものを反芻して見る。
細部を見て、どうして作家はこういうことをしたのか?想像してみる。
とても興味をそそる作品だった場合、後で評論を読んでみる。(この時、自分の思っていたことが評論と符合すると、とてもうれしい気分になる。)(その思いを、他の人と話し合う機会があれば、更に楽しい。)

私の鑑賞方法は、こんな感じです。鑑賞を大切にしたい理由は、やはり自分が感動したいからです。そのためには、自分が主体になって、リアルな作品に、会いに行くことになります。SNSで、色々な人が感想を言っているかも知れませんが、(時間が許せば)画像で済まさず、実物を見に行かなくちゃいけないな、と思います。つまり私は、人がどう感じるか?より、自分がどう感じるか?の方を、大切にしているのです。

私が、あなたの質問を論破しようとしているのではないとお断りした上で、お勧めの体験があります。
美術館で行われる、鑑賞ワークショップです。
学芸員さんが、皆さんと一緒に会場を回って、作品の解説をして下さいます。
面白い学芸員さんなら、まず皆さんに「この作品をどう思うか?」質問をするでしょう。皆さん一人一人が、感想を言います。その時「こんな感じ方があったのか?」と、それぞれの感じ方の違いに驚ろかされることがあります。その後、学芸員さんは、皆さんの感想と作者の制作意図を、上手くつないでくれるはずです。
それぞれが解釈し、学芸員さんと謎解きするような体験だと、私は思うのですが、いかがでしょう?

最期に、それぞれの解釈は大事ですが、アーティストがどういう背景を持ち、どういう思いを持って制作したか?ということは、私はとても興味深く思います。それによって、更に感動が深まったという経験が、たくさんあったからです。